ドックズベストセメント削らない治療
むし歯は患部を削ってそこを素材で充填するというのが大原則です。
むし歯に侵された部位は菌のコロニーになっているのでこれを除かないことには菌が次々と繁殖してしまいます。
侵された歯は酸でドロドロに溶けており、爪で削ることができます。
つまり歯としての強度が著しく落ちていて役に立たない状態になっています。
なのでこの不要になった部分を除去し別の素材で埋めよう。この流れは自然なものだと思います。
しかし、必ず歯を削らなければないらない従来の手法ではなく、なんとか歯を削らないでむし歯を治せないかという試みは常に行われてきました。
日本では3MIX法や3MIX-MP法などが開発されて一定の評価を得ていましたが、広く普及はしていませんでした。
薬による歯内療法は停滞していましたが、近年アメリカ発祥のドックズベストセメントが輸入されてきました。
患部にドックズベストセメントを入れて蓋をするだけで中のむし歯菌が全て除菌されるというものです。
また、再石灰化を促すことで歯が元に戻るので結果として歯を削らないで治すことができるという仕組みです。
アメリカからの流入について
歯内療法は日本でも行っていたのになぜアメリカからの輸入品の薬を使って行うのか?
これは3MIX法の利用が難しいことが挙げられます。
3MIX法は確立した手法とはいえ、利用は各歯科医院に任せられており、症例においてどのくらいの薬を利用すればよいのか?
そういったケースバイケースに対応するような臨床例がしっかりと共有されているわけではありません。
そこで海外でしっかり臨床を積んだ薬が入ってきたわけです。
ドックズベストの問題点
削らず治せるのが利点のドックズベストセメントですが、当然問題点もいくつかあります。
それは結局歯科医師各自の利用方法に差があることです。
どれくらいの症例には適用できて、どのように経過を見ていくかさえ歯科医師各自に利用方法が任されているので、予後が悪いのに確認が疎かになるような医院だと実は内部でむし歯が繁殖しているということもあります。
ベストなのは施術して年単位で音沙汰なく治療が終わること(その後金属を被せる)ですが、本当に内部でむし歯を撲滅しているのか確認しなければ、受けている側としても安心できないでしょう。
なので時々歯を開けて確認してくれるような先生がベターです。
もしむし歯が生きている状態であれば、更なる処置をしてもらわなければならないので確認は必須といえます。
問題はこの頻度です。処置をして1年くらい放置する先生もいれば、半年くらいで確認する先生もいらっしゃるようで。
確認は必要だけど、いつにどれだけするのか?
これを処置の前にしっかり説明してくれる先生が望ましいわけです。
この辺りをはっきりさせない場合、患者側からアクションを起すのは歯が痛くなってからとなります。
それではどう考えても不味いわけですから、いついつにどうする。どうした結果歯の状態がどうであるか判明するからどうする。
そういった未来図を全て説明してもらい、予後が悪くともどうする。良くてもどうするとしっかり患者にわからせてくれる先生を選ぶべきです。
患者側が一番不安に思う場所は、どうしたらいいかわからないことです。
この部分をしっかりと明示してもらえていれば、例え歯が痛んだとしても、ドックズベストセメントの予後が悪くても歯科医院を右往左往することはありません。
利用の前に疑問点を全て潰す
確実に聞かなければならないのは
おおよその総額(補綴物を含めた)
予後に起こりうること(痛みなど)
歯を開けて経過を確認するタイミング
むし歯が進行してしまった時の医院の対応(進行度でどう対応するか)
おおよそこれらをしっかり問いただせば、ある程度の状況は許容できると思います。
逆に言えばこれらの説明が欠けている医院は何かあったとき
どうとでも取れる対応をする
その場の状況で臨機応変にするつもりでいる
という場当たり的な対処をするつもりとしか言いようがありません。
発言にはある程度の責任がつきますから、明示したくない先生もいらっしゃいます。
しかし、それらも含めて説明の責任が医師にはあるのです。
それを追求しないということは、後で何が起こっても文句しか言えないわけです。
今まで薬を用いた歯内療法は一般に定着しませんでした。
それは個々の医院側の力量もあったでしょうが、一番の原因は使った後にどのような未来が待ち受けているのか患者側に理解させていないことが主な原因でした。
現在でもそういった医院は少なからずあります。
もし、ドックズベストセメントで治療を受けるのであれば、医師の力量よりもしっかり説明してくれる先生なのかどうかを見るべきです。
予後が悪くても自分のところが責任を持って面倒見る! というくらい言ってくれると最高ですね。
まあ、流石にそこまで力を入れてくれる先生は希少でしょうが、患者を安心させるような先生を選びたいところです。