MTAセメントを使った根管治療

根管治療の際に歯にパーフォレーション(穿孔)が生じてしまうことがあります。

このパーフォレーションが発生するとむし歯菌が歯の外の組織に出て行ってしまいそこで炎症を起こしてしまいます。

なので歯に穴が空いていることが分かったら、埋めなければなりません。

今までもこの穴を埋める素材はありましたが、穴を塞ぐ素材が穴から染み出てくる体液で硬化しにくいことが難点としてあげられていました。

しかし、アメリカで使われているMTAセメントはこの液体に対しても硬化する性質を持っており、かつ生体親和性も高いことで根管治療に際して有効であると広まってきました。

MTAセメントの輸入が可能になってから急速に広まり多くの医院で用いられるようになりました。

 

MTAセメントの利用費用

MTAセメントは非常に高価な薬剤です。

取り扱いメーカーのホームページによると

https://www.ssl-system5.com/~dentsply-sankin/imgdata/item/MTACatalog.pdf

およそ1g8000円から1万2千円くらいの価格になります。

これに送料や施術費が乗っかるのでMTAセメントを使う費用は最低限1万円以上かかります。

 

MTAセメントを検討している方へ

MTAセメントを使うということは治療を自費で全て行うことになるので、全体の治療費は高くなります。

根管治療であるという想定でいくと、治療費+被せ物+MTAセメントの料金で5~6万は最低いくんじゃないでしょうか。

保険で治療を想定していたら方ですと1万以内だと漠然と考えておられるでしょうから、Σえ?

と思われているんじゃないでしょうか。

MTAセメントだけ使って後は保険で治療できないの?

そう思われている方。

残念ながら国のお達し故無理です。

最終的な報酬が同じなら、レセプトの手続きがあるとはいえ歯科医院とはしては否やはないでしょう。

保険で治療できるならどんどん行うでしょう。

でも、残念ながら現行の保険制度では無理です。

保険で使う薬剤はいくらと決まっており、それ以外は保険では使えず、使った瞬間に全ての費用が自費になるシステムが今の医療制度だからです。

保険は税金ですから、税金使って良い治療を受けようなんて百年早いということです。

使えば確実に成功率があがると医師も考えているけれど、明らかに患者側の支払う料金の桁が跳ね上がるのでそうそう勧められません。

歯についてどれだけお金をかけられるか、お金をかける意思があるのかは人によって様々です。

しかし、健康保険に加入している人はそれなりの保険料を支払っているので、出そうと思えば出せない金額ではないはずです。

実際、医療保険などに入っているとしても病気になれば病院に行ってそれなりの金額を払います。

1ヶ月通院するような病気であればCTや薬剤などもろもろ3万くらいは保険でもかかります。

高いとは思いながらも支払うでしょう。

しかし、歯になるとどうしてかお金をかけようとは思わなくなる人が結構います。

MTAが必要となるような状況だと、かなり重い歯の症状です。

通院も1ヶ月単位になっているはずです。

歯を一本失うということは、体の一部を失うことなのでかなり重大な事態です。

小指の第一関節から先が無くなる瀬戸際という状態だったら手術などに10万くらいかかっても払えるなら誰もが治療をすると思います。

体の一部の欠損は深刻な状態なのに不思議と歯に関してだけは1本くらいいいか?

こんな考えの人が多い気がします。

MTAセメントを使ったとはいえ必ずしもその後何十年と歯が持つか歯科医師でさえ保証はできませんが、少なくともお金をそれだけ使ったという意識がある場合は前より自分でのメンテナンスにも力が入るはずです。

その結果としてむし歯にならない。

予後が良いのであれば、費用対効果は高いと思います。

 

 

ただ……失敗する可能性もあるんですよ。

補綴物は自費の場合保証が付いていることが多いのですが、MTAセメントに保証をつけている医院さんはないんじゃないでしょうか?

もし予後が悪くてセメントが用を成していない場合その分を新しくMTAセメントを使って治療してくれるかどうかは医院の対応によるでしょう。

というか、その後があったらもうセメント云々じゃなくて手術か抜歯かという状況でしょう。

そうデメリットばかりを考えると確かにGO! とはなりにくいです。

しかし、まだまだ人生10年20年以上生きる予定があるのならば、歯を失わないようにするメリットは高いと思います。

体に投資するという観念はまだそんなに発達していませんが、しっかりと健康のためにお金を使った人と使わない人では大きく差が出ます。

とはいえリスク高低が把握しがたい投機になるので、失敗したらやれもかれも歯科医院の所為にするかもしれない人には向かないと思います。

(リーマーファイル片とかの金属片が残ってたりとかするなら別ですが)

MTAが治療で選択肢に入った人は、もっと情報を色々集めて歯について知ってから、担当の先生と相談するのがいいでしょう。

しっかりとカウンセリングに時間を割く医院が増えてきているので、使うとどうなる。使ったけど駄目だったらどうだ、という風にきちんと疑問には答えてくれるはずです。

失敗しても納得できるように、失敗するならどういう原因があるのかまで特定してもらい(それでも予想外の事態は起きます)ああ、そうなったのかと思えるくらいまで先生と意識を同調させた上で治療を受けるならばどう転んでも良い……くわないけど、マシだと思います。

 

ともあれ現在治療中の歯がどういう推移を辿るにしても、今後他の歯がむし歯にならないように注意しなければならないのはMTA使うにしろ使わないにしろ変わりません。歯が1本抜けると道連れをどんどん作っていきますが、しっかり穴埋めとメンテナンスをするならば保全できます。

治療が失敗して抜歯になったとしても、歯科医院に絶望せずメンテナンスに力を入れましょう。